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蛸田窯・作陶日記

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2015年 10月 29日

かわくぢら

紅葉には少し早いので、夜な夜な煌煌と渡り往く月を愛でながら、
漆黒の闇の深さに想いを馳せ 飴釉の器を少し焼いてみた、
驢蹄口(茶入)、棗、徳利、盃と茶碗2点。

茶碗は、古信楽窖窯土で捻ったものに皮鯨風に飴釉と松葉灰釉で景色附け1280℃で焼締めてみた。
釉の雪崩や石爆ぜ、見込みの景色も想定通りとなり好みの出来となった。

焼締りの状態は色、寸法、重さ的にも適度の物と成り喫茶を満喫できそうだ。

現在読んでいる「漢字学」(阿辻哲次)から「説文」、「蒼頡」の名をいただいて銘々。

漆黒の驢蹄口(茶入)、棗、徳利、盃は次回に披露。

本日の成果
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茶碗:銘「説文」せつもん 高さ 75mm x 口径 105mm x 高台径 46mm  飴釉/松葉灰釉 古信楽窖窯土 焼成 Oct/29/2015

説文解字とは(説文ともいう)、後漢の許愼(きょしん)が著した、約九千の文字の一つ一つに文字の成り立ちを解き、  
本義(文字の元来の意味)を究明し、「部首法」という原則で文字をグループごとに分類した、中国最古の字書。

かわくぢら_e0048046_13401062.jpg
茶碗:銘「蒼頡」そうけつ 高さ 80mm x 口径 110mm x 高台径 48mm  飴釉/松葉灰釉 古信楽窖窯土 焼成 Oct/29/2015
 
「蒼頡篇」とは始皇帝の有能なブレーンであった李斯(りし)が作成した漢字習得の為の識字教科書である。

後の時代、梁の周興嗣(しゅうこうし)の作った「千字文」がわが国でもひろく用いられている。   
同じ文字を再び用いないという原則のもとに、四字で一句とし計二五〇句、すべて一千字の文字を綴って
意味のある文章にし、更に韻をふんで暗記したり口誦するのに便宜を図ったもの。          


* かわくぢら=茶碗や皿の縁に鉄釉をかけて焼成すると黒っぽい茶褐色に変色し、その色が鯨の皮身に似ているところからこの名がある。
        唐津に始まりその後各地に広まった。







# by takodenkama | 2015-10-29 13:09 | 作陶日記
2015年 10月 04日

引き出し黒茶盌(三)



今月は月初から良いことがあった、いつも応募してなかなか購入機会をゲット出来ない
薩摩焼酎、”森伊蔵(1800ml)” をゲットすることが出来たので、とても嬉しい!!!。

今回で7度目の獲得と成った。ちなみに1/2サイズの森伊蔵(720cc)も高島屋で
毎月抽選がありこちらの方がもう少し効率よく購入出来ている。

そんな訳で、ウキウキ気分で黒盌の焼成を、いろいろと変化を付けて取り組んでみた、
同じ土、同じ釉薬でも引き出し時間や還元雰囲気、それに焼成温度や炎の通り道などを
微妙に調整して異なった雰囲気の三点をモノすることができた。

相変わらず、月をテーマに唐詩から主題を厳選して銘々してみた。

本日の成果

引き出し黒茶盌(三)_e0048046_22482155.jpg

茶碗:銘「夢天」(むてん) 高さ 88mm x 口径 120mm x 高台径 48mm 蛸田黒釉 土岐艾土 焼成 Oct/01/2015

夢天     李賀              
老兎寒蟾泣天色  老兎 寒蟾(かんせん) 天色に泣く    
雲楼半開壁斜白  雲楼 半ば開き 壁斜めに白し       
玉輪軋露湿団光  玉輪 露に軋(きし)り 団光 うるおう  
鸞珮相逢桂香陌  鸞珮(らんばい) 相逢う 桂香の陌(みち)
黄塵清水三山下  黄塵 清水(せいすい) 三山の下(もと) 
更変千年如走馬  更(あらたまり)変わること千年 走馬の如し
遙望斉州九點煙  遙かに望めば斉州 九点の煙        
一泓海水杯中瀉  一泓(いちおう)海水 杯中にそそぐ    


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茶碗:銘「半輪」(はんりん) 高さ 88mm x 口径 118mm x 高台径 48mm 蛸田黒釉 土岐艾土 焼成 Oct/01/2015

  峨眉山月歌  李白            
峨眉山月半輪秋  峨眉山月 半輪の秋      
影入平羌江水流  影は平羌江水に入って 流る  
夜発清渓向三峡  夜 清渓を発して 三峡に向かう 
思君不見下渝州  君を思えども見えず 渝州に下る


引き出し黒茶盌(三)_e0048046_14521561.jpg

茶碗:銘「蕎麦」(けうばく) 高さ 90mm x 口径 124mm x 高台径 46mm 蛸田黒釉 土岐艾土 焼成 Oct/01/2015

村夜       白居易                   
霜草蒼蒼蟲切切  霜の降りた草が青々とし虫がちりちりとさえずり
村南村北行人絶  村の南も村の北も行き交う人がいなくなった  
獨出門前望野田  独り門前に出て野をながめると        
月出蕎麥花如雪  月明かりにそばの花が雪のようだ       










# by takodenkama | 2015-10-04 20:17 | 作陶日記
2015年 09月 25日

セレン赤釉の茶盌

9月21日は今秋一番の好天となった。

再起動の窯焚きは1200℃の引き出し黒を中心にセレン赤の焼成も試みた。

当日、写真が撮れず、夜の室内光では発色が困難で写真に成らないので、今日曇天ではあったが
自然光線で1枚撮って見た。満足な出来ではないので後日再撮影にゆだねる。

村田珠光の「心の文」から初心の大切さと、巧者の我慢、我執を戒める言葉に同調して、
銘は「我執」(がしやう)と決めた。

本日の成果
セレン赤釉の茶盌_e0048046_07024571.jpg

茶碗:銘「我執」 高さ 92mm x 口径 124mm x 高台径 50mm セレン赤釉 信楽赤土 焼成 Sep/21/2015

心の文              殊(珠)光                      


此道、第一わろき事ハ、心のがまむ(我慢)がしやう(我執)也。               

こふ(巧)者をばそねミ、初心の者をバ見くだす事、一段無(二)勿躰(一)事共也。         

こふしやにハちかづきて一言をもなげき、又、初心の物をばいかにもそだつべき事也。    

此道の一大事ハ、和漢のさかいをまぎら(粉)かす事、肝要肝要、ようじん(用心)あるべき事也。

又、当時、ひゑかるゝと申て、初心の人躰が、びぜん(備前)物しからき(信楽)物など     

をもちて、人もゆるさぬたけくらむ(闌暗)事、言語道断也。                

かるゝと云事ハよき道具をもち、其あぢわひをよくしりて、心の下地によりてたけくらミて、

後までひへやせてこそ面白くあるべき也。                       

又さハあれ共、一向かなハぬ人躰ハ、道具にハから(拘)かふべからず候也。         

いか様のてとり風情にても、なげく所、肝要にて候。                  

たゝがまんがしやうがわろき事にて候。又ハ、がまんなくてもならぬ道也。        

銘道ニいわく、心の師とハなれ、心を師とせざれ と古人もいわれし也。         


セレン赤釉の茶盌_e0048046_16494104.jpg
心の文    殊(珠)光が弟子の古市播磨法師に贈った手紙。












# by takodenkama | 2015-09-25 16:43 | 作陶日記
2015年 09月 22日

引き出し黒茶盌 (二)


半年ぶりの焼成は黒茶碗の引き出しから始めた。

日頃、勝手流で茶を喫しているのだが殆ど例外無く黒半筒茶碗を用いている。

やはり日常的に使用するとなると、口縁部が欠けたり、皹が入ったり、時には不注意から割ってしまったりすること
もしばしばで、常に気に入った黒茶碗のストックを持っておきたい。

また友人や個展の機会に茶碗を求められた時にも、本来の茶を喫する器としての茶碗としては、黒茶碗を薦めたい。
そのようなことで、作陶の再開は黒茶碗を5点焼成してみた、また別の意味で、本来の表現者としての内在する欲求に
応ずべく、しばらく焼成していなかったセレン赤釉の茶碗も2点焼成した。

昨日戻って来たTINA(Triumph Tina,100cc scooter 1962)の整備も手を付けながらの焼成は、力仕事が重なった上
に、本日の好天と、引き出し時の窯の炎熱(1200℃)と久々の興奮と相和して、今日はとても疲れた。

此の黒茶碗に、月を愛でるならば ”此の月の月” と古来比我の地でもてはやされている故事に倣って、
李白「月下独酌」の中から”零乱” と銘々。


本日の成果
引き出し黒茶盌 (二)_e0048046_07045479.jpg

茶碗:銘「零乱」 高さ 94mm x 口径 118mm x 高台径 48mm 蛸田黒N0.2釉  土岐艾土 焼成 Sep/21/2015

月下独酌」 李白
花間一壺酒  花間 一壺の酒        
独酌無相親  独酌 相親しむ無し      
挙杯邀明月  杯を挙げて 明月を邀(むか)へ
対影成三人  影に対して 三人を成す    
月既不解飲  月既に 飲んを解せず     
影徒随我身  影徒らに 我が身に随う    
暫伴月将影  暫らく月と影とを伴うて    
行樂須及春  行樂 須らく春に及ぶべし   
我歌月徘徊  我歌へば 月 徘徊し     
我舞影零乱  我舞へば 影 零乱す     
醒時同交歓  醒時 同じく交歓し      
醉后各分散  醉後 各(おのおの)分散す  
永結無情遊  永く無情の遊を結び      
相期獏雲漢  相期して 雲漢獏(はる)かな

* 邀   = まねきよせる 
  零乱 = くだけみだれる
雲漢 = 天の川   



おまけ
引き出し黒茶盌 (二)_e0048046_08454760.jpg
Triumph Tina,100cc scooter 1962












# by takodenkama | 2015-09-22 07:38 | 作陶日記
2015年 09月 06日

引き出し黒茶盌 (一)


再起動

半年間の休養を終わらせ、愈々として再起動に取り組む。
手始めに、春に焼成してそのまま放っていた茶盌の写真を撮り披露しておく。

引き出し黒茶盌で1280℃と高温での引き出しで器体の艾土の状態も蛸田黒釉の
艶もなかなかによく引き締まっていて面白い味わいと成った。

しばらく、つや消し状態の黒釉を追求していたので、このような艶の在る黒茶盌は
いつ以来だろうか・・・・・・・。

本日の成果

引き出し黒茶盌 (一)_e0048046_00010574.jpg

茶盌:銘『玄妙』 
高さ 82mm x 口径 125x130mm x 高台径 68mm 釉薬:蛸田黒 土岐艾土 焼成 04/25/2015

巌前独静座 円月當天耀
萬象影現中 一輪本無照
廓年神自清 含虚洞玄妙
因指見其月 月是心枢要

厳前(がんぜん)に 独り清坐(せいざ)すれば    
円月 天に当たりて輝く            
万象(ばんしょう), 影 現わるる中         
一輪 本より照らす無し           
廓然(かくねん)として神(しん・心)自ずから清く
虚(きょ)を含みて玄妙 洞(ふか・深)し     
指に因(よ)りて 其の月を見れば        
月は是れ 心の枢要              


寒山( 唐代の僧,生没年未詳)

*一輪本無照 = 月は本来何かを照らそうとしていない

* 玄妙 = 幽玄微妙










# by takodenkama | 2015-09-06 08:17 | 作陶日記